Red Hat社のKVM採用でXenはどうなる? (20080620-1)
正式版で何がうたわれていようと、Red Hat社の仮想化戦略は常に問題を抱えてきた。
それは2004年12月にスタートした。同社はこのとき、自社のエンタープライズOSである「Red Hat Enterprise Linux(RHEL)4.0」の仮想化エンジンにオープンソースハイパーバイザーのXenを採用する計画を明らかにした。
だが残念ながら、Red Hat社がようやくXenを搭載したRHEL 5.0をリリースした2007年3月までの2年間、このような計画が現実になることはなかった。
そして2006年の半ば、同社は遅ればせながら興味深い作戦に出た。Xenは未成熟だと宣言し、自社のエンタープライズ版ディストリビューション(SUSE Linux)にXenを統合するのは無責任だとし、最大のライバルであるNovell社を非難してきた。
おそらくこの主張を裏付けるためと思われるが、Red Hat社はどのエンタープライズ標準で考えても最低限だと思われるGUIしかXenに用意せず、何とかRHEL 5を出荷してきた。それが「Virtual Machine Manager」だった。
そこから一連の劇的な流れが続いた。
まず、Microsoft社がXenSource社、Novell社、そしてVirtual Iron社といったXenの重要なプロジェクト参加企業と次々に提携した。その後、2007年8月にはCitrix社がXenSource社を買収した。
つまり、同オープンソースプロジェクトに立ち上げ当初から参加していたにもかかわらず、Red Hat社はそれから1年も経たない間にXenの開発に対する影響力の大半を失ったのだ。
同社がほかの選択肢の評価を早急に進めるであろうことは想像に難くなかった。そして、Red Hat社にとって唯一有益な選択肢が、開発期間わずか6カ月でLinuxカーネルに組み込まれた登場間もない仮想化プラットフォームのKVMだった。
KVMはRed Hat社に多数の利点を提供する。
たとえば、同製品は正式なカーネルモジュールとして出荷され、保守への膨大な投資が必要ない。
またたとえば、Novell社はこれを採用しておらず、しばらくはその可能性も低い(今のところMicrosoft社とCitrix社で手一杯だ)。
そしてたとえば、これにより、Xenへの本格的投資にこれ以上興味のないIBM社が新しく強力な味方につく。
さらに、これがカーネルに組み込まれていることにより、Microsoft社、同社の同盟各社、あるいは厄介なベンダー各社が開発に影響を与えるのは相当困難になる。
そこでRed Hat社は6月19日、KVM採用の発表という、十分に予想されていた行動に出た。
同社はKVMを組み込んだ新しい軽量ディストリビューションを用意し、これをRed Hat社の仮想化プラットフォーム(「Embedded Linux Hypervisor」)として販売する。
さらに同社は、標準化されたlibvirt APIを基盤にし、数千台の仮想マシンまで拡張できるよう開発された「oVirt」という新しい全社レベル対応の管理ソリューションも発売する。
さて、これでXenはどうなるのだろうか?これに投じたRed Hat社の投資はどうなるのだろうか?
正式なプレスリリースに明確な記述はないが、選ばれている言葉を見ると、Xenは過去のものでありKVMが未来である、との意味が読み取れる。
Red Hat社がXenのサポートを継続するのかどうか、あるいはハイパーバイザーを利用するためにRHEL 5を選定した大企業の顧客が今後どうなるのかは分からない(これは、XenとKVMの両仮想マシン間に互換性がないためだ)。
いずれにせよ、Red Hat社がXenを明日にでもサポートから外す可能性は低い。同社はXenの諮問委員会に参加しており、サポートポリシーにもすべてのディストリビューションは7年間サポートするとある。
Red Hat社はこの期間を使い、KVMの方が仮想化エンジンとして優れていることを顧客に納得させたい考えなのかもしれない。たとえば、Virtual Machine Managerは既に、仮想マシン管理用のデスクトップユーザインターフェースへと分類し直されている。
Embedded Linux HypervisorもoVirt管理コンソールも、既にベータ版がこちらからダウンロードできる。
Red Hat社では、両製品の正式版の発売時期は明かしていない。

