仮想化に関するニュースダイジェストとその洞察 (Since 2003)

Microsoft Hyper-V:1日後 (20080630-9)

6/30/2008   |   原文はこちら (English)

Microsoft社は6月26日、同社初の基盤ハイパーバイザーである「Hyper-V 1.0」をリリースした。

言うまでもなく、Microsoft社のような市場リーダーが、ハイパーバイザーのような重要な新製品を、爆発的な動きのある仮想化のような業界に向けてリリースし、これに全事業部が重点を置くようになると影響がいくつか出てくる。

同製品の投入がどれほど遅れようと、機能が限定されていようと、市場に既に製品があふれていようとあまり関係ない。Microsoft社が(ついに)仮想化に完全にコミットしたという事実は、戦略的および経済的に市場の情勢に影響を与えるのだ。

以下は、市場の各社から得た最初の反応をまとめて、それにわれわれの分析を加えたものだ。


パートナーおよび競合各社の位置づけ

Citrix社は現在、あらゆる面で「Hyper-V」と競合し(両者はアーキテクチャさえも似通っている)、多くの場合その機能で勝る「XenServer」を先ごろ入手したばかりではあるものの、Microsoft社とは強力な提携関係にある。

両社は既に協力戦略を宣言しているため、Citrix社からはHyper-Vとの対話や管理に対応した製品に期待して欲しいとのコメントしかなかった(これは「XenDesktop 2.0」を指す)。

Microsoft社の製品が出てきたため、この相乗効果が実は、Citrix社自らに悪い結果をもたらすのかどうかは今後見守っていく(1年前に出たTerminal Services版のように)。


Virtual Iron社 の立場は大きく異なる。
同社もCitrix社のようにXenベースのハイパーバイザーを販売しており、現在はHyper-Vが最初のリリースで狙うのと全く同じSMB市場をターゲットにしている。 

Virtual Iron社では、新しいハイパーバイザーでは新しいOS(Windows Server 2008)の採用を余儀なくされる、1.0リリースなので顧客が信頼せず本番環境で使わない、大半の顧客が望む多くの機能が欠けている、一部の仮想マシンがLinuxで動作する混在データセンタの運用に関してはMicrosoft社は最良のベンダーではない、という4つの主張によってMicrosoft社の製品に打撃を与えようとしている。

これらの主張の大半は次のように議論の余地がある。
(ハイパーバイザー搭載時に)Windows Server 2008を採用するのも、別の仮想化プラットフォームを採用するのも、この特殊なケースでは新しいOSにエンジンとしての役割しかないため違いはない。顧客はVirtual Iron社の時とほとんど同じように、自由にWindows Server 2003(より前の)仮想マシンを運用できる。
Hyper-Vに多くの機能が欠けているのは事実だが、それらがすべて絶対必要だというのは事実ではない。相当な数の小規模企業では、仮想化の採用はまだものすごくシンプルなサーバの集約だけ必要な段階にある。Hyper-Vではその作業が可能なのだ。
(Microsoft社が出荷時にNovell OSしかサポートしないという大変な間違いを犯したとしても)MicrosoftベースのハイパーバイザーはLinux仮想マシンをうまく仮想化できず、Xenベースのハイパーバイザーの方はWindows VMを完ぺきに仮想化するということは考えにくい。また、仮想化されたシステムの95%がWindowsであることを考慮すると、顧客の優先事項が何なのかは想像しやすい。

しかし、Virtual Iron社の言っていることは一点だけ正しい。今日、Microsoft製品の最初のリリースが信頼できないことは周知の事実だ。 
本番環境への1.0製品導入の回避は、検討中のベンダーがどこであれ多くのITマネージャが心得ているアプローチだとされるが、Microsoft社の場合は、いかなる製品でもエンタープライズ関連の最初に投入されるものは拒否するという特殊な教訓もある。
Microsoft社は市場にある否定的な考え方を変えるため、必死に開発を進めてHyper-V 2.0を早急にリリースすべきだ。


Sun社の反応ははるかに穏やか(リンクはない)だが、Microsoft社との相互運用性契約を考えれば予想通りのことだ。

Sun社はCitrix社とほとんど同じように、基盤ハイパーバイザー(xVM Server)、コネクションブローカ(VDI)、およびクロスプラットフォーム管理ソリューション(Ops Center)など、完全な仮想化ポートフォリオの構築を進めている。これは、Microsoft社との全面的な競合を意味する。
それにもかかわらず、Sun社はCitrix社と全く同じようにHyper-Vを歓迎し、自社製品でのサポートを正式に約束している。

いずれにせよ、ライブマイグレーション機能がないため顧客が予定外の停電で何もできなくなる、新機能のインプリメンテーションが早いためHyper-Vにはオープンソースのライバル製品と競合する可能性がある、Hyper-VはWindowsゲストOSしかサポートできず消費電力削減に役立たない、Hyper-Vは拡張できない、Hyper-Vは物理環境を管理できないなど、Sun社はこの新製品の重大な欠点も進んで強調している。

Virtual Iron社の主張はほぼどれも議論の余地があり、新製品の採用を阻止しようとするSun社の立場の弱さには驚かされる。
エンタープライズ関連の顧客が必要とするライブマイグレーション不在は確かに重大なことだが、Microsoft社が同ハイパーバイザーの最初のバージョンでこれらのユーザ層を何とかしようとしていないこと明らかだ。
これは2番目のポイントにもつながる。SMB市場はサーバ集約の基本要件が既に満たされている限り、最後の最先端機能については懸念していない。
Hyper-VはWindowsゲストOSだけをサポートするわけではないが、そのような場合も仮想化システムの大部分はWindowsであるため、同ハイパーバイザーは顧客のニーズに対応できていて、消費電力削減の取り組みでも十分に役に立つと思われる。
Microsoft社がHyper-V用に選んだアーキテクチャはVMware ESXほど拡張はできないかもしれないが(これはとにかく検証が必要だ)、Sun社はまもなく登場する「xVM Server」で全く同じものを採用している。
大事なことを言い忘れていたが、Hyper-Vが物理および仮想の両インフラを管理できないという事実は全く無意味だ。Sun社に「Ops Center」があるように、Microsoft社には同じ作業のために「System Center Operation Manager」(SCOM)がある。ただ、これはハイパーバイザーの代わりにはならない。


Parallels社のアプローチはさらに簡単だ(リンクなし)。
同社では サーバ仮想化製品をリリースしようとしているが(これがHyper-Vなどの各種基盤ハイパーバイザーと競合できるようになるかどうかは明らかでない)、その存在の柱となっているのがホスティング市場で幅広く採用されているOS仮想化技術の「Virtuozzo Containers」だ。

このため、Parallels社ではHyper-Vは自社にとって脅威ではないとだけコメントしているが、このチャンスを生かし、同製品が大半のLinux、BSD、およびSolarisゲストをサポートしないことを強調している。


言うまでもなく、VMware社立場が最も想像しやすい。
市場をリードする同社は、Hyper-Vがあまりにも信頼を得てしまうと最も大きな打撃を受けてしまう。

同社にとってのHyper-Vは、十分な信頼性がなく、十分な安全も確保できておらず、サイズも小さくなく、機能は少なすぎるし、統合できる製品の品揃えも豊富ではない。

このような場合でも、これらの主張の一部には議論の余地がある。
VMware社がなんと言おうと、Hyper-Vのサイズは実際のところESXのそれより小さい(前者が1Mバイト未満であるのに対し後者は32Mバイト)が、アーキテクチャのアプローチに違いがあるため、双方の比較は非常に複雑なことになる。
Microsoft社には、Hyper-Vにまもなく統合およびサポートされる幅広い製品がある。「System Center Virtual Machine Manager」(SCVMM)が明らかだし、「Operation Manager」(SCOM)、「Configuration Manager」(SCCM)、「Data Protection Manager」(DPM)などがこれから続々登場する。これらの製品は協力してハイパーバイザー単独で提供する機能を拡張し、SMB市場の大半を満足させる可能性もある。
現在、Microsoft社が顧客が望む仮想化ベースのソリューション(すなわち、VDI環境用のコネクションブローカと、半自動開発/テスト環境用仮想ラボ管理ソリューション)をすべて提供できていないのは事実だ。しかし、SMBの1社がこれらのいずれかのアプリケーションに興味があれば、それは用意する必要がある。 
投資先のどの分野でも有名なMicrosoft社の戦略は、パートナーに市場機会を探求させてから買収もしくは競合していくというものだ(VMware社がVDIやP2V移行の分野でこれまでしてきたこととほとんど同じ)。

しかし、VMware社は少なくとも2つの点において正しい。
まず第一に、Hyper-Vはその信頼性を実証する必要がある(MSDNとTechNetの両WebサイトのHyper-Vへの移行だけでは不十分)。
また、同製品はセキュリティレベルも実証する必要があるが、(ハイパーバイザーが完全に信頼する)親パーティションでフルバージョンのWindowsを使用するという選択は、Hyper-Vの攻撃範囲を大幅に拡大してしまう(ハイパーバイザーが使っていないすべてのサービスをServer Managerが拒否できても関係ない)。
さらに、Hyper-Vのカーネルは(信頼できるレベルまで熟成されている)Windowsのカーネルではなく、Microsoft社が詳細に触れようとしない新しいものだ。
いずれにせよ、Microsoft社もVMware社もコードの脆弱性を同じように処理する必要がある。どのベンダーも自社のコードの方が安全だと断言することはできない。

 

The stock market reaction

VMW_hyperV

CTXS_hyperV

MSFT_hyperV

 

アナリストの観点

Microsoft社の仮想化市場参入は波紋を広げるだけでなく、顧客の間では混乱も広がっている。また、業界アナリストもアドバイスを求められている。 


Chris Wolf氏
(Burton Groupのシニアアナリスト)の分析は非常にバランスが取れている:Hyper-Vには重要な機能がいくつか欠けている(ライブマイグレーション、メモリのオーバーコミット)が、同製品は安定しており無償で、1.0バージョンとしては許せる範囲だ。
Microsoft社は市場への本格参入をこれ以上待つことができず、予定していた機能セットのハイエンド側を犠牲にする必要があった。

Wolf氏はさらに、多くの顧客にとって真っ先に要因となるコスト面から、Hyper-Vは最初のリリースでも本番用として検討できるという。このような理由から、同氏はESXの価格が下がることを予想している。

そして、ハイパーバイザーの価格が低下すれば、競争は管理レイヤに移動していく。
そこでは、物理および仮想の両インフラをシームレスに管理できるスイートを持つMicrosoft社に競争上のアドバンテージがあり、一方のVMware社はまだ仮想マシンだけに重点を置いている。
したがって、この市場リーダーがMicrosoft社に後れを取らないようにするためには、HP社、IBM社、CA社、およびBMC社などのエンタープライズ管理製品ベンダー各社としっかりした提携を結ぶ必要が出てくる。


Brian Madden氏(BrianMadden.comを運営する独立系アナリスト)は非常に適切な 予測を示している。
同氏の考えによると、Hyper-VはCitrix社が基盤仮想化エンジンとしてのXenの採用を取りやめ、2009~2010年までにHyper-Vを採用するようなところまでMicrosoft社とCitrix社の関係に深い影響を与えるという。

このシナリオは当初可能性が低いようにも思えるが、このようなものが出てくるにはそれなりに理由がある。この動きは両社の関係に再びバランスをもたらし、スタック全体の完全なレプリケーションを持つ代わりに、(Terminal Serverの時と同じように)Microsoft社のエンジン上で革新を加えるチャンスをCitrix社に与えてくれる。

この大幅な変更を正当化するため、XenServer(Xenベースの現状)の現在の市場浸透度はゼロに近くなっている、とMadden氏は話す。また、Microsoft社が同様に迎え入れられる可能性はかなり低いため、Citrix社も独自路線を進むのではなく、この流れに便乗する方を選ぶ可能性がある。

自身の論点をさらに堅実なものとするため、Madden氏はCitrix社のビジネスモデルはオープンソースコミュニティーとのやりとりを念頭に入れておらず、同社がこれまでそれにコミットしたことはないと強調している。

したがって、Citrix社がXenを捨てると、その周辺のコミュニティーは崩壊し、KVMに大量移動し、Virtual Iron社、Oracle社(Red Hatの関係でかなり早くKVMに移行する可能性がある)、Novell社、およびSun社など、オープンソースエンジンに依存する他社に深い影響を与える。

 

新たな勢力図

要は、Hyper-Vにどの機能があってどの機能がないかとか、非常に密度の高い環境でホスティングできるVMの数がいくつかではなく、どのようなユーザ層に対してサービスを提供しようとしているのかなのだ。

virtualization.infoが2007年4月に書いているように、VMware社はSMB市場全体をそのままにして、自社のフラグシップ製品によって完全に大企業のニーズに重点を置いた。
これにより同社は、Microsoft社の市場参入後も生き残る確率を高く維持しており、当初からここを居場所にしていたのかもしれない。

Microsoft社は自社の歴史から、少なくとも2番目のリリースまでHyper-Vではエンタープライズ市場にアプローチできないことが分かっているので、取り組む場所を決める必要が出てきた同社は、最初は最低限の機能だけで市場の最大限の範囲を支援する安定した高速仮想プラットフォームの提供に集中することにした。簡単でシンプルなサーバ集約だ。

仮想化技術の採用はまだ限定的で、ハイレベルの機能では当初から競争の必要がない。利益が大きいのはSMBレベルで、ここでは、Microsoft社にはだれよりもうまい動き方が分かっている。

したがって、VMware社が「ESX 4.0」のリリース直後に自社のアプローチを修正し、サーバを集約する以上のものを独占的に販売してくる可能性はかなり高い。まず自動化、次にクラウドコンピューティングだ
もしそのようになるなら、その時点でVMware社の本当のライバルはMicrosoft社ではなくなり、サーバの集約を超えたところで価値を実現すべく既に取り組んでいるCitrix社となる。


このエコシステムはどうなるのだろうか?

現在は、Microsoft社が最高の提携パートナーだ。Hyper-Vは、サードパーティー各社が強化を施す余地を大きく残しており、Microsoft社も自社のポジションを強化すべく、そのうちのいくつかの購入に踏み切る可能性さえある。
一方、VMware社の方はますます気楽には提携できないようになりつつある。競争で後れを取らず、だれもが望むダイナミックデータセンタを構築する取り組みで、同社はすべての分野に投資をし、同社のプラットフォーム上で価値を実現する機会を減らしている(VDI市場が現在の一番の好例だ)。

したがって、市場の小規模企業は生き残るためにどこもが少なくともこれら2つのプラットフォームのサポートを目指し、Microsoft社の方を優先するのはほぼ確実だ。

一方、Citrix社とエコシステムの関係がどのようになるのかは明確でない。3番目のプラットフォームをサポートするにはかなりのコストがかかるし、ある意味、同社は独立系の仮想化ベンダーというより、Microsoft社の付加価値パートナーのような活動をしている。
このシナリオでは、規模の小さいサードパーティーベンダーはCitrix社を優先パートナーというよりむしろライバルとして見るかもしれない。 


また、ほかの仮想化ベンダーにはどの程度のスペースが残されるのだろうか?

あまりない。Parallels社、Virtual Iron社、Novell社、Red Hat社、Sun社、そしてOracle社は、自社のプラットフォームが理にかなうニッチを見つけなければ、SMBを巡ってMicrosoft社と競合しなければならなくなる。

Parallels社は既にそのようになっており、顧客が低価格で集約率の高いものを必要とするとき必ず好んで選ばれるOS仮想化技術に絞って重点を置いている。だが、同社はサーバ仮想化製品もリリースする。Apple市場以外で「Parallels Server」がどのように受け入れられるかは見ものだ。 

Oracle社も同じで、完全に閉ざされたポリシーにより、同社は顧客が自社のハイパーバイザーしか使えないようにしている。

Novell社は現在、Microsoft社との相互運用性契約で保護されているため、同社によるXenのインプリメンテーションは、Linuxユーザー向けHyper-Vと考えて問題ないだろう。

Sun社では自社の顧客に重点を置いている可能性があり、Virtual Iron社とRed Hat社は早急に安住の地を探す必要がありそうだ。 
仮想化エンジンとしてXenを使う両社にとって、登場間もないKVMプラットフォームはNovell社と強力な仲間に対処することなくLinuxコミュニティーにとどまれる優れた機会のように思える。
Red Hatは既にその方向へと向かいつつある