仮想化技術採用ガイド - パート4 (20070522-4)
前回は、仮想化技術採用プロジェクトのプラニングフェーズ最後の部分であるROIの計算について解説し、プロジェクトの実質費用を明らかにした。
今回は、ついに運用フェーズの最初の部分に入っていく。仮想化に適していると判断した物理マシンのPhysical-to-virtual(P2V)移行だ。
候補マシンの選択については、あとに続くキャパシティ・プラニングフェーズに必要なデータを提供するために欠かせないという解説を本シリーズの冒頭で行った。
これから説明していくが、物理サーバのコンテンツを仮想マシンの内部に移動する作業は、時間と費用のかかる複雑な技術的操作が必要になる場合が多い。
物理から仮想への移行
物理コンピュータのコンテンツをディスクから仮想マシンへと移行する作業は、ファイルやフォルダを元の場所から新しい場所にコピーするだけといった単純な作業ではない。
仮想マシンが実現する仮想ハードウェアは、オリジナルのサーバ上で使っているものとは必ず異なり、移行直後の最初の再起動時にOSカーネルが新しいデバイスを認識し、これらを処理するためのドライバを探す。
新しい機器に合わせて調整を行うため、カーネルは適切なドライバが見つからないと動作を完全に中止して絶対に起動しない。
OSにもよるが、この調整処理が多かれ少なかれ処理を複雑にしている。
移行で最も問題の多いOSがMicrosoft Windowsで、新しいハードウェアをスムーズに設定するには何らかの支援ツールが必須だ。
P2V移行ツールは、正しくブートするよう必要なドライバをカーネルに渡し、適切なタイミングと順番でこれらを初期化し、死のブルースクリーン(BSOD)の表示を回避する。
一方、Linuxの調整処理ははるかに簡単で、優秀な専門家であれば市販ツールがなくても処理できるが、その作業は厄介なことこの上なく、かなりの時間を要する。
また、対象となる仮想プラットフォームとのやりとりが必要なため、このプロセスの残りの手動操作部分を自動化することはできない。
実際、P2V移行ツールは元のコンピュータから移行先の仮想マシンへのデータの移動や、移行への対応を行うだけでなく、適切な仮想ハードウェアで構成された新しい仮想マシンを作成し、起動して、ベンダーが用意する必要なパフォーマンス強化ツールもインストールできなくてはならない。
仮想化業界でこの分野をリードするのは「PlateSpin」と「VMware」だが、ほかにも「Leostream」や「HelperApps」などの注目に値する競合製品が存在する。
初めて仮想化に取り組む企業は、仮想マシンのなかで物理サーバをゼロから再構築するコンフィギュレーション中の想定外のミスに関連した費用などをもれなく加味せずに、これを簡単な作業だと決めつけてしまい、P2V移行ツールは非常に高価だと考えてしまう。
多くの場合この認識は誤りだが、消極的な見込み客に初めて対処する新たなアプローチをとったのがPlateSpinだ。同社のP2V移行ツールは、2006年9月からレンタル対応しており、小規模プロジェクト向けとしても妥当な変換単位価格を提案している。
いずれにせよ、アプローチの選択肢はほかにも存在する。今日では、複数の仮想化の専門家や愛好家が無償のP2V移行ツールを提供している。これらは数台のサーバの変換には良いものの、大規模な変換プロジェクトに対応できるまで拡張できた実例は今のところない。
発生する技術的問題が市販ソリューションの変換単位費用をコスト的に大幅に上回ると、たいていの場合は顧客がこれらのツールの修正に要した膨大な時間にすぐに気付いてくる。
現代のP2V移行ツールに足りないのは、候補マシンの選択機能やキャパシティ・プラニング製品とやりとりする機能だ。
これらのツールを統合すれば、変換直後のどの仮想マシンでも負荷が最も低いホストサーバに即座に移動可能になるため、仮想マシンへの移行がスピードアップする。
本稿執筆時点でこのようなサービスを用意しているのはPlateSpinだけで、同社のP2Vソリューションである「PowerConvert」と、同じく同社の「PowerRecon」発見ツールとの統合を可能にしている。
望ましいメリット
P2V移行ツールの検討では、逆の処理、つまりVirtual-to-Physical(V2P)移行の実行能力が大きなメリットになる。
当初は仮想マシンを集約するニーズが多いが、いったん仮想化が導入されると、この機能を利用した方がさまざまな問題の解決が容易になる。
たとえば、社員に新しいワークステーションを配備する際の膨大な管理作業の負担も、ITマネージャーが理想的な仮想マシンを1台コンフィギュレーションし、これを一新されたハードウェアに投入することで大幅に削減できる。
現在では、「Symantec Save&Restore」(旧「Ghost」)のようなディスククローニング・ユーティリティを利用すればこの作業も多少緩和できる。だが、これらのソリューションには、ハードウェアコンフィギュレーションに依存するため異なるサーバに同じイメージをレストアできないという問題、そして望ましいコンフィギュレーションに修正を加えるたびに必ず新しいマスタイメージの保存が必要になるという問題の2つの深刻な制限がある。
1つ目の制限は最近になって対応が進み、従来のクローニングツールを強化してイメージを異なるハードウェアにもレストア可能にした「Acronis」などのディスクイメージ製品ベンダーが仮想マシンもサポートしてきたが、たいていの場合はV2P操作も可能なP2V移行ツールが最良の選択肢となる。
P2V移行製品の検討時にもう1つ考えなくてはならない機能が、いわゆるVirtual-to-Virtual(V2V)移行の遂行能力だ。
V2V移行は、異なるベンダーの仮想マシン間でOSとそのデータを移行し、そのホストレベルや異種仮想ハードウェアの相違点を処理してくれる。
データセンタに複数のハイパーバイザーが浸透すれば、大手企業各社はマルチベンダー管理と製品間のシンプルなアプリケーション移行手段への対応を余儀なくされる。
この分野をリードするのはやはりPlateSpinで、VMware、Microsoft、Virtual Ironの各社仮想化製品間でのV2V移行を既にサポートしている。
ダウンタイムの回避
最も効率的なP2V移行ツールにも、処理中は物理マシンが全く使えなくなるという大きな制限がある。
移行に要する時間はローカルストレージの容量とネットワークの速度に正比例する。72Gバイトのディスクを搭載した物理マシンで標準イーサネット回線を使った場合の平均は最大30分となる。
これではサービスのダウンタイムコストが相当なレベルに達してしまい、ミッションクリティカルな環境やService Level Agreement(SLA)が結ばれているところでは許されない。
幸いにも、P2V技術は進化を続けており、PlateSpinが既にライブ移行機能を用意してダウンタイムを完全に回避している。
この待望のプロセスは、オープンされているものやロックのかかっているものも含め、すべてのファイルをコピーする特殊なテクニックによって実現された。
現在、ライブ移行はWindowsの物理サーバにしか対応していないが、同社では将来的にLinuxもサポートしていく。
自動化の今後
近い将来、候補サーバの選択、キャパシティ・プラニング、そしてP2V/V2P/V2Vの各移行ツールは本来の目的を離れ、24時間対応の仮想データセンタ最適化に対応する自律したインテリジェントな自動サービスとなっていく。
完全な自動化が実現すると、候補サーバ選択コンポーネントがデータセンタ全体を24時間スキャンして十分活用されていない物理サーバや過負荷のかかった仮想マシンを探す。
そのようなマシンが見つかると、それがキャパシティ・プラニングコンポーネントに報告され、これが最適な移行先を提案する。物理サーバが十分活用されていない場合は仮想マシンに変換し、仮想マシンに過負荷がかかっている場合は、もっと負荷の低いホストに移動したり、再変換して物理マシンに戻す。
さらに、これらの命令が移行コンポーネントに渡され、これがダウンタイムを発生させることなくシームレスな処理を行う。
こうなると、環境全体が完全に柔軟になり、ワークロードに応じて分単位で形態を変えるようになる。そして、サービスを提供しているのが仮想マシンか物理マシンかの区別さえできなくなる。
次回は、リソースの処理や監視、インフラの自動化や障害回復といった複数の課題に直面する2番目の重要な運用フェーズであるエンタープライズ管理について見ていく。
*ご注意:本稿は、昨年英語版サイトで最も閲覧されたニュースのうちの一つとして掲載しております。そのため一部情報が古い可能性もございます。 なお、原文はこちらをご参照ください。
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